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H2O2蒸気でRTUバイアル除染に新たな可能性

作成者: Syntegon Technology|30.11.2023

小規模生産に移行しつつある医薬品業界において、滅菌・包装済みの「すぐに使える」Ready-to-use(RTU)容器は大きなメリットがあります。RTU容器を使用すれば、医薬品メーカーは、市場投入までの時間を削減し、製造プロセスの柔軟性を向上することができます。しかし、課題もあります。滅菌済みのRTU容器を汚染させずに、充填ライン内の滅菌エリアまで移送する最適な方法は、まだ確立されていません。そこで、シンテゴンは「過酸化水素(H2O2)蒸気」に着眼しました。トレイ、タブ/ネスト内のRTUバイアルの外面除染にH2O2蒸気が使用できるか検討するため、当社は、医薬品包装資材のプロバイダーであるStevanato Groupと協力して、業界初となる実験をしました。その結果、H2O2蒸気を使用することで、小バッチ製造の柔軟性と効率性がいずれも向上することが実証できました。

 

 

 

 

 

RTUバイアルに関する新たな洞察

実験は、ドイツ・クライルスハイムにあるシンテゴンの医薬品試験用ラボ「Pharmalab」で実施されました。H2O2法を試験するため、プラスチックバイアルとガラスバイアルの両方がアイソレーター内で一般的なH2O2除染サイクルに曝され、最も典型的な2タイプのバイアル材料に関して信頼性の高い比較可能なデータが収集されました。各バイアル材料に関して、3種類のプローブ(滅菌済みかつ袋詰めされたサンプルバイアル、外装から取り出した対照バイアル、外装から取り出した後に栓をした対照バイアル)が試されました。エアレーションして一定時間待った後、検証用液体を使ってバイアルの内側表面がさまざまなタイミングで洗浄され、各試験溶液中のH2O2量が調べられました。

 

試験の結果は、包装、バイアルサイズ、バイアル材料、曝露時間、エアレーション時間といった複数のパラメータが、容器内のH2O2濃度に影響を及ぼすというものでした。例えば、今回のデータによると、ガラスバイアルはプラスチックバイアルよりもH2O2蒸気の吸収量が少ないことが示唆されています。アイソレーター内部の残留H2O2濃度が一般的な標準量である0.5ppmに達するまでエアレーションした場合、サンプルバイアルを透過したH2O2は、わずか2ナノモル(nmol)未満という影響を無視できる量でした。

 

 

理論から実践へ

結局のところ、「万能」の解決策はありません。アイソレーター内の残留H2O2濃度に対する反応は、医薬品ごとに異なります。H2O2による影響は、活性物質やその製剤の特徴といった複数の要因に依存するのです。医薬品メーカーはこれらの相互作用を完全に理解するため、そしてH2O2蒸気による除染が自社製品に最適な方法であるかを評価するためにも、まずは正確なデータを収集する必要があります。今回、シンテゴンとStevanato Groupの実験によってデータ収集のための強固な基盤が築かれました。これにより医薬品メーカーは、自社製品の試験とデータに基づくRTU移送プロセスの決定がしやすくなりました。今回の実験で得られた新たな洞察は、RTU容器を使用した小バッチ製造および充填-仕上げプロセスにおける、新たな可能性を開くステップとなるでしょう。

 

https://www.psmarketresearch.com/market-analysis/rtf-rtu-vials-market-trends