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注射剤の充填 ー 小バッチとマイクロバッチが医薬品製造プロセスに与える変化

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病気の治療にバイオテクノロジーが採用されるようになり、細胞・遺伝子治療薬などの先端医療医薬(ATMP)を使った個別化医療が広がりつつあります。それに伴い、多くの製薬企業は、従来の生産要件や充填要件と大きく異なる少量医薬品の開発と商業化に投資するようになりました。個別化治療で使用する医薬品は、一般的にきわめて高価であり、研究開発に多くのリソースがかかります。製造段階では、変化する要求に対応しながら small batch(小バッチ)生産やさらに小規模な micro batch(マイクロバッチ)生産と呼ばれる柔軟な処理が必要となり、専門性の高い製造設備のコンセプトが求められます。

 

「Small batch (小バッチ)」という用語の正確な定義は、ICHガイドラインには明記されていませんが、米国FDAは「産業界向けガイダンス、ANDA:原薬および医薬品の安定性試験、質問と回答(Guidance for Industry, ANDAs: Stability Testing of Drug Substances and Products, Questions and Answers)」のなかで次のように回答しています。

 

小バッチは計画された最大の商業用バッチサイズの少なくとも 10%、充填量に換算すると 15,000 個ないし 60,000 個未満の容器数で構成されます1。臨床試験に使用される非経口薬の場合、バッチサイズは数千個にまで減少します。自己細胞治療のような高度な専門治療の場合、バッチはさらに小さくなり、1人の患者に必要な容器は、平均して5~10個程度です。

 

柔軟なソリューションへのニーズが高まる中、シンテゴンでは、小バッチ、マイクロバッチ用の多品種対応充填システム Versynta* シリーズ をリリースしました。


1 FDA: Guidance for Industry. ANDAs: Stability Testing of Drug Substances and Products – Questions and Answers, May 2014.

 

モジュール式ソリューションの小バッチ生産設備 

小バッチ生産設備として、新たに開発されたシンテゴンのVersynta FFP(バーシンタ FFP: Flexible Filling Platform)は、RTU(ready-to-use)容器およびバルク容器に対応したモジュール式プラットフォームであり、1時間当たり最大 3,600 個のバイアル、シリンジ、カートリッジを処理できます。  

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Versynta FFP(バーシンタ FFP: Flexible Filling Platform)

医薬品メーカー、開発研究所、バイオテクノロジースタートアップに対して、標準化された高度なモジュール式ソリューションを短納期で提供します。

層流に最適化した設計により、空気の流れが阻害されることなく容器に到達し、その周囲を流れるようになっています。充填プロセス中に 100% の工程内管理(IPC)を行うことで、製品損失を最小限に抑え、高品質な製品をほぼミリリットル単位で確実に充填できます。またロボットアームの採用により、アイソレーター内で容器が充填ステーション巻締ステーションに搬送される際の汚染リスクを大幅に低減すると同時に、フォーマット部品数の削減や、ガラス同士の接触の回避といったメリットがあります。

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自動化でより高い安全性を

人間の介入は、依然として医薬品汚染の主な原因となっています。こうした介入を減らす、または無くすには自動化が不可欠です。FDAは2004年の時点で、「無菌処理に使用される機器の設計にあたっては、無菌操作での作業員の介入の数と複雑さを制限すべき」だと要求しています。さらにFDAは、「ロボット工学を始めとする技術の使用などによって他のプロセス工程を自動化すれば、製品へのリスクをさらに減らすことができる」と述べています2

2 FDA: Guidance for Industry. Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing – Current Good Manufacturing Practice, September 2004

 

グローブ操作を排除したマイクロバッチ生産

さらに少量のバッチの生産には、同シリーズ Versynta microBatch (バーシンタ マイクロバッチ)が特化しています。高度な柔軟性を備えた全自動のユニットであり、1時間当たり 120 ~ 500 個のバッチをさまざまな容器に充填・打栓します。バッチの切り替えはわずか2時間で可能です。実質的な製品損失を出すことなく、ガラス製またはプラスチック製のシリンジ、カートリッジ、バイアルに充填することができます。

Syntegon_Versynta_microBatch

Versynta microBatch は、奥行き 3.5 メートル、幅約 2 メートル、高さ 3 メートルとコンパクトサイズであり、既存の生産施設内への組み込みが容易に可能です。アイソレーター自体は 1.6×1.5 メートルで、タブオープナー、100% の工程内処理を実施する充填ステーション、打栓と巻締を行う統合ステーションが収容されています。空調設備も統合されているため、空気処理のための建物や専門的な天井設備との接続機構は必要ありません。さらに、ロボットアームの採用により、グローブレスアイソレータとして、自動化における新たな基準を打ち立てました。蒸気滅菌された部品はポートシステムを通して供給され、ロボットによって取り付けられます。作業員による手作業での介入が排除できるため、汚染リスクが大幅に低減します。これにより、Annex 1 に明記された最高の無菌要件を満たしています。

 

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卓越したフレキシビリティ

Versynta FFPは、バイアル、シリンジ、カートリッジなどのさまざまな容器タイプや、シングルユースソリューションを始めとする多様な充填システムに容易に適合させることができます。

 

拡大するRTU容器市場

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小バッチ・マイクロバッチ分野の進展とともに、RTUReady-to-use容器の市場は急速な拡大トレンドを示しています。最近の報告3によると、RTUバイアルの市場だけでも今後 10 年間で世界的な売上高が約 11億8000 万米ドルになると見込まれており、成長率は 14.5% と推定されています。RTU容器は小バッチ生産に適した選択肢であり、医薬品メーカーにとって、処理手順の簡単化、総所有コストの削減、柔軟性の向上といったメリットがあります。

3https://www.psmarketresearch.com/market-analysis/rtf-rtu-vials-market-trends

RTU

なかでもRTUシリンジは、1980 年代から他の滅菌済み容器に先駆けて市場を切り拓いてきました。RTUシリンジのメリットは、小規模バッチにおいて顕著となります。バルクシリンジの場合は、非滅菌状態で供給され、かつ、自立しないため、機械内や充填プロセスにおいて複雑なハンドリングを伴います。また、摺動性を確保するためにシリコン処理が必要となります。シリコン処理のプロセスは、充填方法によっても変化し、例えばバイオテクノロジーで製造された医薬品の場合は、シリコン処理のレベルを低くしなくてはなりません。

 

 

時間、スペースを含めたトータルコストの節約

RTU容器自体はまだコスト高ではありますが、医薬品メーカーにとって、時間、スペース、トータルコストでみた場合、大幅な節約になります。部品の洗浄、シリコン処理、滅菌といった多くの工程は、RTU容器メーカーに委ねられます。専門知識を持つRTU容器メーカーが、全てのプロセスが現行の世界的な要件に従って適格かつ検証されていること、また納品される容器のエンドトキシン、微生物、粒子濃度が認可の範囲内であることを確認してくれます。滅菌済みのシリンジシステムの場合は、必要なシリコン処理プロセスに関する確認も含まれます。

 

高価格のATMPとさまざまなRTU包装資材に対する需要の拡大と同時に、小バッチおよびマイクロバッチ向けの新たな設備に対する要件も増加しています。新たな設備は、様々な容器を柔軟に処理できるだけでなく、自動化を通し人間の介入を最小限に抑えるという点でも市場のニーズに応えなければなりません。最良のシナリオは、一次包装資材メーカーと機械メーカーが綿密に協力して新たなソリューションを見出すことです。双方がトレンドの先にある将来を見越して協業することで、医薬品メーカーに対して理想的な製造プロセスを保証し、患者に対して最高レベルの製品安全性を保証するシステムを開発することができます。

 

著者

Klaus Ullherr 

Senior Project Manager

Syntegon Technology GmbH

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シンテゴンテクノロジー株式会社


村田 紀子
マーケティンググループ

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